世界中で絶賛される村上春樹の代表的長編小説『ねじまき鳥クロニクル』――。 “Haruki Murakami”が、 世界で読まれるきっかけとなった作品が、 2020年2月、 いよいよ舞台化される。 この舞台を創り上げるのは、 イスラエルの奇才インバル・ピントと気鋭のアミール・クリガー、 日本の演劇界に新しい風を送り続ける藤田貴大、 そして独自の音楽世界を持つ大友良英。 芝居、 コンテンポラリーダンス、 音楽が融合し、 既成のジャンルを創造的に超える空間が立ち現れる。 Tokyo Tokyo FESTIVALの助成を受けた「ねじまき鳥クロニクル」
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https://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2020/
演出・美術・振付のインバル・ピントは、 日本ではミュージカル「100万回生きたねこ」や百鬼オペラ「羅生門」を手掛け、 高い評価を受けた。 彼女は原作の世界をファンタスティックに描き、 唯一無二の舞台空間を生み出して日本の演劇界に大きなインパクトを与えたことは記憶に新しい。
共同演出と脚本を担当するのは、 演劇団体「マームとジプシー」を主宰する藤田貴大。 様々なジャンルのアーティストとコラボレートするなど現代演劇の新たな可能性を広げている藤田が、 インバル・ピントと初の共同演出に挑む。
そして音楽は、 藤田が絶大な信頼を寄せる、 世界的な即興演奏家の大友良英。 NHK「あまちゃん」「いだてん」など映像作品の音楽でも広く活躍する大友によって、 演出家の世界観が生演奏と歌でヴィヴィッドに体現される。
村上春樹作品の舞台化といえば、 蜷川幸雄演出による「海辺のカフカ」が今年2月のパリ公演、 5月の凱旋公演で大きな反響を巻き起こしてラストステージを終えたばかりだ。 今年、 作家デビュー40周年を迎えた村上春樹の作品群の中でも、 きわめて重要な意味を持つと言われる長編『ねじまき鳥クロニクル』。 その深い迷宮のような世界が、 時代の先端を疾走するエッジの効いた表現者たちの手によって、 どのように舞台の空間に浮かび上がるのか。 村上ワールドの新たな演劇表現への期待が高まっている。
■演出・振付・美術:インバル・ピント Inbal PINTO
イスラエルの演出・振付・美術家。 1992年より自身のカンパニーを立上げ、 イスラエル国内だけでなく世界各地で公演を行っている。 アメリカン・ダンス・フェスティバルの国際振付プログラムに招聘され、 2000年にはニューヨーク・ダンス&パフォーマンス賞を受賞している。 ノルウェーのオペラハウスにて演出・美術を手がけた『The Cunning Little Vixen』はその独創的な演出で話題となった。
―コメント
大好きな日本でまた仕事をさせてもらえることをとても嬉しく思います。
村上春樹さんのスケールの大きな物語を凝縮し、 ドラマ性やミステリー要素を失わずにダンス、 音楽、 テキストなどの表現を用いて舞台化するのは、 大きな挑戦です。
アミール・クリガーさんとは、 お互いに持っている世界観が近いということはわかっていますが、 一緒に仕事をするのは今回が初めてです。 打ち合わせを重ねる中で、 彼と共に作品をより深いものにし、 一人ではたどり着けないような領域に達することができるだろうということに気づき始めています。
まだ多くの時間を共有できていませんので第一印象にはなりますが、 藤田貴大さんは聡明で優しい方だと思います。
大友良英さんはこれまで私がご一緒したどの音楽家とも違った方法で音楽を作り出す方なので、 この作品ではどんな音が生まれるかとても興味深いです。
好奇心を刺激するクリエーターの皆さんとの共同作業をとても楽しみにしています。
■ 脚本・演出:アミール・クリガー Amir KLIGER
テル・アビブを拠点に劇作家、 演出家、 ドラマターグとして活動している。 昨年、 イスラエルの劇作家Uri Nitzanの戯曲「The First Coming」にドラマターグとして関わったのち、 同戯曲をHaifa Theaterで演出上演した。 2015年にも同劇場で英国の劇作家Sarah Kaneの戯曲「4.48 Psychosis」の演出を手がけ、 好評価を得た。 振付家の創作にドラマターグとして参加することも多い。
■ 脚本・演出:藤田貴大 FUJITA Takahiro
2007年に“マームとジプシー”を旗揚げ。 作品を象徴するシーンを幾度も繰り返す“リフレイン”の手法を演劇に取り入れ注目を集める。 11年、 第56回岸田國士戯曲賞を26歳で受賞。 14年には、 横浜市文化・芸術奨励賞を受賞。 16年第23回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。 藤田の代表作の一つである『cocoon』を観た蜷川幸雄氏は、 作品の持つ美しさと瑞々しさに共感し、 すぐさま作品を依頼。 藤田は、 蜷川氏の半生を描いた戯曲「蜷の綿」を書き下ろす。
―コメント
村上春樹さんが「ねじまき鳥クロニクル」で扱っている30代の男性は自分と同じ世代で、 今自分が取り組みたいモチーフと一致しているから、 とても興味があります。
今回一緒に演出をするインバル・ピントさんの作品を過去に観て、 その世界観に惹かれて、 彼女の創作現場を見てみたいと思いました。 そして、 今までも作品を共に作ってきた大友良英さんとの新しいクリエーションもとても楽しみです。
■音楽:大友良英 OTOMO Yoshihide
即興演奏やノイズ的な作品からポップスに至るまで多種多様な音楽をつくり続け、 その活動範囲は世界中におよぶ。 映画音楽家としても100作品を超える映像作品の音楽を手がる。 2012年、 プロジェクトFUKUSHIMA ! の活動で芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門を受賞、 13年には多岐にわたる活動で東京ドラマアウォード特別賞、 レコード大賞作曲賞他数多くの賞を受賞している。 現在放送中のNHK大河ドラマ「いだてん」の音楽を手がけている。
<あらすじ>
岡田トオルは妻のクミコとともに平穏な日々を過ごしていたが、 猫の失踪や謎の女からの電話をきっかけに、 奇妙な出来事に巻き込まれ、 思いもしない戦いの当事者となっていく――。
主人公トオルは、 姿を消した猫を探しにいった近所の空き地で、 女子高生の笠原メイと出会う。 自分の行動が原因でボーイフレンドを死なせてしまい、 登校拒否を続けるメイ。 トオルを“ねじまき鳥さん”と呼ぶようになり、 二人の間には不思議な絆が生まれていく。
トオルは妻の薦めで、 自らを“水の霊媒師”と称する加納マルタと会い、 猫をみつける手がかりを得ようとする。 マルタからいくつか予言をもらうが、 肝心の猫に関してはっきりしたことはわからない。 それどころか、 妻のクミコまで忽然と姿を消してしまう。 クミコの兄・綿谷ノボルから連絡があり、 クミコと離婚するよう一方的に告げられる。 クミコに戻る意思はないと。
どこで道を間違え、 どこに落とし穴があったのか、 トオルは過去を辿る。 クミコの姉は若い頃に自殺をしていて、 兄のノボルが何かしら自殺に関係していたとクミコから聞いたことがあった。 加納マルタの妹・クレタはノボルと交わることで損なわれ、 “肉体の娼婦”から“意識の娼婦”になったと言う。 クミコ失踪の影にはノボルが関わっているという疑念は確信に変わっていく。 その一方でトオルは、 もっと大きな何かに巻き込まれていることにも気づきはじめる。
ある日トオルは、 二人の結婚に力を貸してくれた本田老人から、 第二次世界大戦下にノモンハンで特殊任務についたときの壮絶な話を聞く。 皮剥ぎボリスの手によって拷問を受け、 生きたまま皮を剥がれていった伍長、 枯れ井戸に放り込まれ九死に一生を得た間宮中尉の話・・・。
何かに導かれるように、 トオルは隣家の枯れた井戸にもぐり、 クミコの意識に手をのばそうとする。 いつしか、 クミコを取り戻す戦いは、 時代や場所を超越して、 “悪”と対峙してきた“ねじまき鳥”たちの戦いとシンクロしていく。 暴力とエロスの予感が世界をつつみこんでゆく。
“ねじまき鳥”は世界のねじを巻き、 世界のゆがみを正すことができるのか? トオルはクミコをとり戻すことができるのか――。
【公演概要】
ねじまき鳥クロニクル
原作:村上春樹
演出・振付・美術:インバル・ピント
脚本・演出:アミール・クリガー
脚本・演出:藤田貴大
音楽:大友良英
<東京公演>
時期:2020年2月上旬~3月1日
会場:東京芸術劇場プレイハウス
主催・企画制作:ホリプロ
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
協力:新潮社
後援:イスラエル大使館
■公演詳細
https://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2020/
■作品公式SNS
作品公式Twitter:@nejimakistage
■作品に関するお問い合わせ
ホリプロチケットセンター 03-3490-4949
(平日10:00-18:00 / 土曜10:00~13:00、 日祝・休)